長岡技術科学大学大学院
環境社会基盤系·技術科学イノベーション系
水圏土壌環境研究室


養殖班
下水処理技術を応用した養殖技術の開発
世界的な人口爆発や気候変動による食糧不足はすでに深刻化しています。これらの問題を解決できる方法として魚を地上で養殖する陸上養殖が注目されています。これまで、実用化への課題として魚類を養殖する際に排出される糞や残餌由来のアンモニアを高速で処理する方法があり、我々の研究チームではこれまで下水処理技術として研究してきたDHSリアクターを水質維持装置として応用できるか研究してきました。他にも、魚を育てながら同時に野菜を育てるアクアポニックスやアメリカミズアブを基点とした地域バイオマス由来の新しい餌の開発を行っています。

閉鎖循環型陸上養殖は、天候や立地に左右されない新しいタンパク質生産技術として注目されています。本研究では、これまで下水処理技術として研究を行ってきたDHSリアクターとupflow sludge blanket (USB)リアクターを複合させたシステムを養殖水槽の水処理技術として応用し、大学内に設置したパイロットスケールの水槽でクエの連続養殖実験を行っています。実験ではさまざまな養殖条件で魚体の成長や水処理装置への影響などの調査を 行い、これまで約3年間の連続養殖実験に成功しています。また、養殖水槽の塩分濃度を海水の半分程度に減らすことで、魚体への浸透圧を低減させ、生育が早くなることやバイオリアクターの処理性能が向上すること、加えて、人工海水にかかる費用を低減させることも明らかになってきまし、電気系岩橋·原川研究室と共同で魚体が異常を起こしたい際に検知できる画像解析ツールの開発や金沢大学竹内研究室と塩分濃度が魚体生育に与える影響などについて研究しております。
1) Kotcharoen, W., Watari, T., Adlin, N., Nakamura, Y., Satanwat, P., Pungrasmi, W., ... & Yamaguchi, T. (2021). Effect of salinities on nitrogen removal performance of DHS-USB system and growth of Epinephelus bruneus in closed recirculating aquaculture system. International Biodeterioration & Biodegradation, 164, 105299.
2) Watari, T., Nakamura, Y., Kotcharoen, W., Hirakata, Y., Satanwat, P., Pungrasmi, W., ... & Yamaguchi, T. (2021). Application of down-flow hanging sponge–Upflow sludge blanket system for nitrogen removal in Epinephelus bruneus closed recirculating aquaculture system. Aquaculture, 532, 735997.
3) Adlin, N., Hatamoto, M., Yamazaki, S., Watari, T., & Yamaguchi, T. (2020). A potential zero water exchange system for recirculating aquarium using a DHS-USB system coupled with ozone. Environmental Technology, 1-11.
4) Satanwat, P., Tran, T. P., Hirakata, Y., Watari, T., Hatamoto, M., Yamaguchi, T., ... & Powtongsook, S. (2020). Use of an internal fibrous biofilter for intermittent nitrification and denitrification treatments in a zero-discharge shrimp culture tank. Aquacultural Engineering, 88, 102041.
閉鎖循環型陸上養殖に関する研究
アクアポニックスに関する研究
魚は、生育に窒素やリンなどを必要としますが、そのほとんどが体内に取り込まず、養殖水槽に排出されます。この大量に放出される窒素やリンの有効な利用·回収方法は確立されていません。これまでは、脱窒細菌によって窒素ガスに転換して大気放出していますが、持続可能な資源利用の観点からも新しい利用方法が求められています。アクアポニックスは水耕栽培と養殖を掛け合わせたもので、魚を育てると同時に野菜の栽培も可能です。我々の研究チームではこのアクアポニックスを電力事情が良くないアフリカ諸国に適用できるようにDHSリアクターを用いた簡易版アクアポニックスの研究を行っています。実験では、大学内にアフリカの気候を再現したビニールハウスを設置し、アフリカで主に食用にされているティラピアとケールの栽培実験を行っています。実験の結果、DHSリアクターを用いることで必要な電力を省力化するとともに、十分な魚と野菜の生育を確認できました。現在は新型コロナウイルス感染拡大によって渡航できませんが、ケニア·ジョモケニヤッタ農工大の研究者と連絡をとりながらアフリカへの適用に向けて情報交換を行っています。

